読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

色とりどりの棒

いろいろな棒と思考の記録帳

少しだけ人間味のあるマシーン

塾の個別講師をしている。今は大学受験を控えた生徒を持っているのだけど、今日彼が定まらない進路について「やっぱり学歴で恥をかきたくないし勉強頑張らなくちゃ」みたいなことをいっていた。

塾講師してる間はものすごーく優しくにこやかに振る舞うようにしているのだけど、そういうちょっとした言葉にはカチンときてしまう。学歴が理由なら大学の四年間絶対つまらないよ、つまらない四年間のために今から勉強漬けになるの馬鹿みたいだからやめちゃいなよ、みたいなことを今日も言ってしまった。そうはいっても周りの大人に学歴を期待されて高い学費を投じられて、そういう価値観を植えられてるんだから、ここでそんなことを機嫌悪く言っても仕方ないよなぁ、と今になっては反省しきりだ。いつもその繰り返し。しかも生徒は「そうですよね……」としょんぼり納得してしまうのが尚更辛い。

僕は四年間続けているこの塾講師アルバイトが大好きだ。苦手な子が口を揃えて言う「文系は暗記」という固定観念を打ち破ってやるぞ、とそれなりに意志に燃えてやってきた。文章を読む楽しさをわかってもらえた気がするし、成績もかなり伸ばしてきた。しかしこういうことがある度にわからなくなってくる。

僕は一応誰もが知る有名大学に通っている。生徒は自分を目標として見てくれる。誇らしいことだけど、それは僕を「努力して勝ち組になった人」として見ているからだと思う。でもそれは屈辱にまみれた誤解だ。僕はちゃんとやりたいことがあって勉強して大学に来たつもりだ。勝ち組になりたいなんてモチベーションじゃなかったし、それだけで勉強できるほど真面目じゃない。やりたいことに勝ちも負けもないだろーが、と感情的になっちゃう。(こういう考えも結局親に由来しているのだけど。ちなみに僕は人生のどの段階でも塾というものに通ったことがない。) 

でも、端からみればやっぱり勝ち組なのかも知れない。ちゃんとした家に住んで、有名私立大学に親のお金で通っている。今の日本ではそれはとても恵まれたことになりつつある。僕は自分の努力以前に、いつのまにか勝ってしまっている。生徒のほうも高い授業料を払って個別塾に通わせるような教育方針の家庭なのだから、僕の置かれたような環境や大学のネームバリューは親御さんにとっても憧れの対象なのかも知れない。

さて、そんな奴が先輩面して勉強を教えてきたら、どんな気分だろうか。しかも呑気に「学歴だけが理由なら大学行くな」とか言ってきたら、どんな気分だろうか。自分なら耐えられないのではないか。そう考えるとなんだか胃がムカムカしてきた。 

もちろん、生徒にこんな個人的な悩みは言いたくないし言わない。自分はこの中途半端な立場では、勝ち組であり強い存在としての役割を演じなければならない。きっと求められているのはそういう存在だ。そうであるならせめて、僕はしっかり勉強をアシストしてちょっと身の上相談に乗るだけの、「少しだけ人間味のあるマシーン」にでもなりたい。マシーンなのでいちいちこんなことで悩まないでしっかり知識を伝授する、そしてただ少しだけ優しさ、厳しさといった人間味を演出する。そういう風になりたい。

おお、まじでどうしようもない結論だな。でもこの半端な立場に留まる限りそれ以上のことをできそうにない。

仕方ないから泡盛でも飲みます。個人的に泡盛にはメンデルスゾーンという感じがする。