色とりどりの棒

わかりたい

恐怖のバラエティー

 

 

帰宅が22時を回るような日が多くなり、輪をかけてテレビを見なくなってしまった。帰るとちょうど「報道ステーション」がついているくらいだ。

それでこの前の夜、ちょっと謎を秘めた感じのラーメン屋に入ったら、なんかのバラエティー番組がついていた。そして驚愕した。

その内容があまりにも酷かったからだ。

 

趣味と称して公の迷惑になるようなことをする者、違法物品を国内に持ち込もうとする者など(=わるもの)を公務員など(=正義)が果敢に取り締まってゆく。だいたいそんな内容で、まあ何も面白くなかったのだが、最後に極めつけの恐怖があった。

ビザなし滞在の中国人女性3人を取り締まる入国管理官の話だ。朝、女性らが普段通り自分のアパートの扉を開けた瞬間、屈強な入国管理官たちが仁王立ちしている (しかもテレビカメラまでいる)。彼らは住人に、パスポートとビザを見せろと威圧的に問い詰める。その結果不法滞在とわかった1人はその場で施設へ連行、最後に「法に従わない者に居場所はないのだ!」とかなんとかやたら勇ましいナレーションがはいって、番組は締め括られた。

それをバラエティーとして取り上げる企画自体が最悪だと思うのだが、さらに恐ろしいのは、残りの2人は結局のところ不法滞在者ではなかったということだ。ナレーションでほんの一瞬、「うち1人は本当に不法滞在者だった」と、その事実が告げられた。

驚愕した。

 

この国では外国人は、合法的に普通に暮らしていても、ある日突然玄関に威圧的な役人が来て脅されなければいけないのか。しかもそれを全国の電波で放送され晒し者にならなければいけないのか。そしてそれを喜ぶ者が、この番組の存続に十分なほど存在するということなのだろうか。

もしこんな不正確で恐ろしい取締がしょっちゅう起こっており、こんなくだらない公開処刑趣味(しかも冤罪)の番組が毎週のように放送され続けるのだとしたら、日本にいる外国人は早く逃げた方がいいのかもしれない。もし自分が晒される立場だったら、と考えると恐ろしくてたまらない。

 

そして不思議なのは、ああいう番組をみて喜びそうな人というのが、身の回りにそんなに思いつかないことだ。そうだとすると、僕の全く知らないような世界に全く価値観の違うコミュニティがあって そこが電波を掌握しているのか、それとも僕が身の回りの人を全く誤解していているのか、どちらかということになる。

まあ、恐らくどちらもある程度は正しいような気がする。

狭隘な集団心と義侠心、日本人であることの優越感、そんな錆び付いた感覚丸出しの残念さを感じてしまう番組だった。ただ、もはやその感覚がマジョリティというわけでは別になく、そのテレビ局やら広告代理店やらの一部のおっさんズ(等)の価値観でしかないのかもしれない。それが肌感覚だ。知らないけど。僕もそろそろおっさんズに片足を踏み入れてきたので、あんな無残なことにならないように、マジで気をつけたい。

 

などと一通りプンプン怒った結果、一方で超楽しい番組もあることは承知しつつ、暇なときに敢えてテレビを見なくてもいいかなぁ……という気持ちに拍車がかかってしまった。